9.アンチエイジング医学と特殊環境(過重力)

(1)宇宙医学の進歩

宇宙飛行士に起こる人体の変化は、地球で暮らしている我々の老化現象と類似していることが多い。逆に言えば宇宙医学の成果を人類の健康長寿に生かすことが究極の予防医学と思われます。宇宙では温度変化に対する反応は、皮膚の血流が低下するために反応が鈍くなっています。筋肉は著しく萎縮し、特に下肢と背骨を支える筋肉が萎縮しまいます。また骨量がどんどん減少するのです、なぜでしょう?それは宇宙生活では腸の動きが悪くなりカルシウム(C a)の吸収が極めて低下し、骨量が減少するのです、従って骨粗鬆症になります、これはまさに(宇宙飛行=加齢加速現象)であります。宇宙医学は1950年ガガーリンの人類初の飛行当時は、宇宙医学は手探り状態でありましたが、今日まで宇宙船で長期生活している宇宙飛行士は500人にも達し、健康管理は極めて改善されました。今は宇宙医学がパーホマンスとして、(究極の予防医学)に発展しました。今注目されているのは、メラトニンアンチエイジング効果があるといわれ、長期宇宙生活に効果が認められ極めて興味深い所見です。

 

  参考資料

1984、2、7、Astr on a ut・EVA、

服部淳彦、自然界におけるメラトニンの分布、メラトニン研究会編、メラトニン研究の最近の進歩、東京、早稲田書店。

 

(2)  宇宙医学よりの健康長寿

国際宇宙ステーション(Inter national S pace Station:lSS)内で生活する宇宙飛行士は過酷な宇宙環境(微小重力、閉鎖空間 、宇宙放射線)で生活を約6ヶ月間行います。その間、骨減少、筋萎縮、体内リズムの乱れなどがリスクとして存在いたします。一方我々地球で暮らしている者にとっての高齢者は同様な医学的課題を共有します。宇宙医学の進歩、および特殊環境(過重力)におけるデーターは地上の健康長寿科学に活用出来るのです。従って空極の予防医学と位置ずけられるのです。

 

参考資料

大島博:有人宇宙飛行と宇宙医学、学術の動向、9:33ー39、2005

 

 

 

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(3) 健康長寿には骨量増加を❗️

骨量は骨のリモデリングによる骨吸収と骨形成のバランスにより維持されるが、宇宙飛行や長期臥床では、骨吸収が急激に増加して骨量が減少します。宇宙飛行士の骨量減少対策としては、骨粗鬆症の患者さんと同様、栄養、運動、薬剤、の3バランスが重要でありカルシュウの入った宇宙m食、とビタミンDの入ったサプリメントを投与しています。微小重力の宇宙での骨量減少は、骨が担う過重負荷に反比例いたしまして、むしろ上肢では変動が少なく、腰椎や大腿骨に大きい傾向になります。骨密度測定装置(DXA)による骨量減少は、大腿骨がもつとも多く、骨量減少率は骨粗鬆症の約10倍になります。老人性骨粗鬆症は、加齢に伴うカルシュウ吸収低下するゆえ、65歳以上の高齢者に多く見られ、私の勤務している長期臥床の患者さんには、出来るだけ起きて動くように進めています。またデイサービスをお勧めして、通所のリハビリで少しでも骨量を減少させない努力が施設長の役目と存じます。

亡くなった明治生まれの祖父は赤髭医師で92歳まで現職医師でしたが、結核など沢山の病を克服しましたが、骨量の低下、筋肉の萎縮により転倒し骨折してから急激に弱ってしまいました。また母も結核、乳癌など沢山の病気を克服しましたが、閉経後骨粗鬆症になりまして晩年骨粗鬆症に苦しんでいました。

宇宙医学の進歩により健康長寿の秘訣は骨量減少をくい止め、、筋萎縮を抑える事が極めて重要であり老年病、予防医学の分野のトピックであります。

 

参考資料

大島博、宇宙飛行士の骨量減少、143-147、宇宙航空医学入門、監修、藤田真敬、鳳文書林出版販売。

 

(4)  健康長寿には筋肉萎縮の予防を❗️

人体を動かす動作は全てが筋肉を収縮して行われます。地上では重力に抗して筋肉を働かすが、宇宙においては微小重力ゆえ、筋肉を使うのが僅かに動かすだけでの生活であります。そのため宇宙飛行における宇宙飛行士の筋肉は、歩行に関する下肢の筋肉が極めて萎縮してしまうのです。したがって宇宙飛行士の足を、バードレック(鳥のように細い足)と称しています。

 

同じく高齢になると、筋力と骨量の減少、および筋収縮速度と筋持久力の低下が進み、加齢性筋肉減少症(サルコペニア:sarcopenia)となります.一般的には30歳から筋力低下が始まりますが、60歳頃から筋力低下減少率が増え、80歳になりますと最大筋力は60歳時の半分まで低下してしまうのです。以上特殊環境である過重力環境内では宇宙と逆ですから筋肉量が増え、健康増進および長寿社会実現に関与出来ると考えられます。

  

 

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参考資料

大島博、宇宙医学に学ぶ健康長寿の秘訣、042(382)-046(386)日本坑加齢医学会雑誌、vol、9、NO

3、2013。